3巻でここまでストーリーをまとめ上げてくださった河井先生に拍手を。あの若さで自分のすべてを奪われてもユキの望むようにしたカイの諦めと男気が美しく、これからユキとバスカヴィルはどうなるんだろうと思いましたが。ユキが決着をつけましたね。よくやったとは言いません。でも、この時ユキが思いつけたバスカヴィルから逃げる方法はたった1つこれしかなく、己が地獄に堕ちる覚悟で実行した彼の行動力には肩を叩きたくなってしまいました。
バスカヴィルの脅威はなくなっても、大手を振ってカイの元に戻るわけにはいかず。それにはカイたちから奪ったものがあまりにも多すぎました。いろんな感情が渦巻いてとにかく逃げ回っていたユキの気持ちはけっして分からなくはありません。でも、読者としてはやはりカイが今までどんなにユキのことを待っていたか、彼だけを望んでいたかを痛いほど知っているので、一刻も早くカイの腕に戻ってあげてほしいと願うばかりでした。カイが追いかけてきても往生際悪く尻込みするユキにはやきもきさせられましたが、長い年月を経てようやく何の取り繕いもない、素直な心の内をカイに晒け出してくれて感無量でした。立派な青年になったカイは魅力的でしたが、やはりユキよりずっと年下なんだなというのが分かる可愛さもあり、そんな可愛いカイに迫られて照れるユキがまた可愛いと、この2人の尊さを噛みしめる結末でした。
2巻で時間が一気に進んでカイが大人になる、というような展開ではなかったのですが、1巻ではカイが子供であるためにあまり萌えを感じられなかったのに、2巻ではぐっと2人の切ない関係に引き込まれました。バスカヴィルの元ではユキが本当に望む愛はけっして得られないこと、一方でバスカヴィルはユキの足枷をけっして外す気がないことが強く印象付けられ、さらにカイがユキを愛する気持ちは大人にまったく引けをとらないほど大きく深いものであることがよく伝わってきたからかなと思います。ユキがカイによって得られた幸福の尊さも切実に伝わってきました。3人がどんな結末を迎えるのか、怖い気持ちも抱えつつ3巻に期待したいと思います。
下巻は淳太の気持ちがどんどん膨らんでいく流れで、長年の亮の片想いが十分報われるくらいの感情を、彼も持ち始めたことが嬉しかったです。一方で、淳太に好きになってもらえるように自分本位な行動をしたりせず、淳太のはっきりした気持ちを聞くまでお笑いの道を真剣に歩んでいた亮もかっこよかった。自分が自分らしく生きられる道に導いてくれた淳太への気持ちは、恋愛的な好意だけじゃなくて、敬愛も慈愛も含む本当に大きな愛なんだなぁと。そんな感情を抱える亮を可愛い、愛おしいと思える淳太ですから、漫才の相方としてもパートナーとしても末長く安泰な、磁石のようにぴったりな関係性に落ち着くんだろうなぁと思います。純粋に漫才道としても仲間同士での切磋琢磨が面白く、BLに偏っていない描き方が素晴らしかったです。
漫才を扱ったBL漫画は初めて読んだ気がします(忘れていたら申し訳ないけれど)。自分は漫才のネタなんかさっぱり思いつかない人間なので、BLでありながらウケるネタ、ウケないネタをしっかり分けて書き込んでいるところにも感心しました。あとがきでも仰っているように、先生のお笑いへの愛が深いことが伝わってきます。そして、天道に長年片想いしているイケメン・四ノ宮がとっても魅力的! 色気を湛えた垂れ目と黒髪が印象的なキャラですが、ヤリチンでもおかしくないのに、擦れたところがなく人とは違う方向に純粋で面白いです。天道の面倒を見ているようで、実は後輩らしく天道に見守られてもいるような、先輩後輩の関係性が絶妙でした。漫才への真面目で挑戦的な姿勢も応援したくなります。下巻を読むのがすごく楽しみです。
なんとなくタイトルや表紙のイメージからラフな雰囲気を想像していましたが、ゲイであることに葛藤するシーンがしっかり描かれているタイプの作品でした。東と柊月の相性は既に割れ鍋に綴じ蓋という感じがあり、大学内での便利屋を本格的に営んでいるのが面白い導入ですね。性的対象はわざわざ言う必要はないというのが今の時代の主流な考え方だと思いますが、男友達に言わないのは不誠実だからあえてオープンにするという柊月の考え方も一理あると思いました。結局正解はないし、自分が傷付きたくないからという理由で言わないのも他人は許容するだろうけれど、本当に許容してほしい近しい人がどう思うかを重んじようとする彼の考えも分かるなと。
そんな彼に、東は本当の自分の気持ちを蔑ろにしたり、他人の気持ちより軽く扱ったりせず、自分のしたいこと、したくないことに真正面から向き合って、意思を尊重することを教えます。自分の好意で他人を不快にするかどうか、傷付けるかどうかは相手による。一概に決めつけるんじゃなくて、1人ひとりときちんと向き合って、打ち明けるか考えてみてもいいんじゃないか。人を好きになる感情自体は普遍的で素敵なもののはず。柊月が東の言葉で考え直して、高校時代の因縁の先輩とも自分の言葉で訣別し、明るい表情を見せてくれたことを嬉しく思います。2人がどんな風に距離を縮めていくのか、2巻が楽しみです。
1巻の復習をせずに読み始めましたが、こんなに複雑な世界だったっけ?と少し戸惑いながら読み進めました。話は難しくありませんが、階級制度はかなり細かく作り込まれていますね。常に落ち着いていて自然と安心感を与えてくれる崇靖と、彼が仕方なく自分のフェロモンの抑制に協力してくれていると思い込んでいる千化八のすれ違いストーリーです。お互い相手に好意を抱いていることは最初から見えているし、長年拗らせていた割には想いの伝え方があっさりで、今回はちょっと物足りなかったかな。崇靖の献身的な愛が素敵だったので、3巻以降でもその後の2人がちょこちょこ見れると嬉しいです。
1巻で3人の関係性にぐっと引き込まれた記憶も新しいうちに、続きが読めて嬉しいです。バッテリーの北斗と真琴、そしてマネージャーの鷲介が引っ張るチームで目指す甲子園。野球が主題の漫画でないとなかなか出場まで漕ぎ着けないのがこの作品も例外ではなく残念なところですが、試合の焦燥感や興奮、開放感と新たな闘志が彼らと同じ熱量で味わえたのは嬉しいです。
鷲介のおかげでここまで来れたと強く感じていた真琴。鷲介と一緒に戦えない今、何のために野球をするのかを見失い、立ち止まっていた彼が、北斗の言葉と行動で前に進む道をようやく見定められたことが北斗推しとして嬉しくもあり、鷲介の目線に立って切なくも感じ。でもやっぱり、鷲介の存在の重みもひっくるめて大事にしたいと言える北斗の器が大きくてかっこいいなぁと。真琴の中で北斗に上書きされない鷲介もすごいし、もう3人ともどうにか幸せになってほしい。そう願うのみです。