BLコミック&BL小説、業界最大級の品揃え!
ねぇ、今——弟のこと、考えてた?
2023年刊行のほうは【非BL】の括りだったので
あえてこちらを。
冒頭から漂う切ない雰囲気は
靖野のことが明かされてさらに色濃くなっていくので
重たい展開になるのも覚悟していたけれど…
心にズーンとくるような重たさはなく、
むしろだんだんスッキリと開けていくような清々しさがあって
苦しくなるところはあってもそこに引っ張られずに読むことができました。
泉の真ん中にはどんな時でも靖野がいるけれど
宗清と出会ったことで
自分自身にもしっかり向き合えるようになって
少しずつ意識が変わっていく様子にはドラマがあり、
恋なんてするつもりはなかったのに
自然と宗清に惹かれていく部分にはしっかり萌えがあり…と、引き込まれるところがたくさん。
ただ、ずっと静かな夜みたいだったストーリーが
突然恋愛モードに切り替わったことに気持ちが追いつかず、
恋愛対象として靖野と宗清を比べてしまう泉にも
戸惑ってしまって。
泉はあえてあの場面で言いたかったのだと思いますが
それならせめて想いを伝えた後にしてほしかったな…と思ってしまいました。
宗清と泉、そして靖野のことだけではなく
それぞれの家族丸ごと関わってくる終盤の展開には驚かされましたが、
詰め込まれたエピソードが渋滞することなく
スッと入ってくる感じ、すごく良かったです。
でも引っかかるところが結構あったので、
物語の世界には浸りきれずでした…。
海の事故で2年間、意識不明の弟を持つ泉。
ふらりとその海に滞在しにきた宗清。
泉の弟に瓜二つな宗清とたまたま出会い、少しずつ近寄っていく。
泉の家族が献身的に弟を看病していて、事故の理由はわからないまま話は進んで。
宗清は泉に惹かれ、泉も宗清といるのは嫌ではなく。
終盤、驚く事実がわかりすごい話やなぁと。
泉のお母さんがある人にいう言葉がすごく心に残って。
それはとても冷たい表現かも知れないけれど、ぐっときた。
楽天的な話では無いけれど、暗くなり過ぎず、のめり込んで読みました。
BL小説の一言で片付けるには色々な要素が絡み合っていて、「恋愛小説」の趣き。角川文庫版なのでイラストも表紙しかなく、前半はなかなか読むペースが上がらなかったのだけど、後半に進むにつれ、散りばめられていた伏線が一気に回収されていく。
今回、書き下ろしの短編が収録されている。この短編によって作品全体の余韻がより深くなるから、旧版を読んだ人もこの書き下ろしは読む価値ありじゃないかな。登場人物がみんな優しい、みんなせつない、
いやいや、さすがの一穂さん、あっぱれ。
何もない海辺の街に、東京からふらっと旅行へきた宗清と、海の事故で意識不明の弟を2年間看病している泉。
2人が親しくなるにつれ、少しずつ明かされる事実。無関係に見えた糸が紡がれて…。
真実が明らかになったとき、あぁーといろいろ納得できました。
もちろん物語なので、いやいやそんな都合よく、という突っ込みもほんの少しありますが、そんなの問題じゃないぐらい読後感がいい!
最後の最後に、宗清の運転免許証の謎だけは笑いました。
海辺の情景が浮かんで、とっても素敵なお話でした。
気持ちいい恋愛小説を読んだなという感想。
男女の話でも成り立つのかなとも思ったのですが、
これはやはり同性間の話でないと書けなかったなと。
それは、ただ血の繋がりのトリックだけではなく。
このお話は普通の同性間の恋愛小説といってもいいかも……
と、思っていたら、最後に濃厚なBL的展開が待っていました!
泉の心情が丁寧に丁寧に描かれていて、でも泣かされたのは宗清の方でした。
文章が、良くも悪くも一穂さんで、
擬音や、景色、心情の表現の仕方が独特だなと。
時々BLを読んでいて「これ、作者は誰だっけ?」と、
表紙を見返す時があるのですが、一穂さんの文章にはそれが無い。
時々引っ掛かりつつも、最後まで読ませてしまうのは流石です。
途中、泉がどちらを選ぶのか、はらはらしつつページをめくらされました。
そういう意味で、靖野の心情にももう少し突っ込んで欲しかったかな。
でも、清々しく読み終えたので「萌×2」